群馬大学理工学部・桐生魅力発信サークル「PLAYLIST」が独自の企画・取材・執筆で作り上げる「群大PLAYLIST PRESS」。地域の情報をサークル・メンバーならではのコンテンツでお届けしています。

 はじめまして、Playlistの岩内です。

 皆さんは桐生市にかつて存在した赤城山鋼索鉄道(ケーブルカー)をご存じでしょうか?

 現在、多くの人々は前橋市を経由して赤城山を訪れています。しかし、今から60年以上前、桐生市を経由し首都圏と赤城山を繋げるための回遊ルート計画が存在しました。そして、その線路沿いにはより古くからの山岳信仰の形跡と御神水が今も眠っています。

 今回は、そんな赤城山鋼索鉄道の遺構を辿り歩き御神水を汲んできましたので、紹介していこうと思います。

覚満淵と赤城大沼

昭和30年の赤城山

 遡ること今からちょうど70年前、高度経済成長期の日本ではレジャー開発にも多大な力がそそがれていました。当時日光における大規模観光開発に成功していた東武鉄道は、かねてから着目していた「赤城山観光開発」に乗り出します。一方の群馬県は赤城山南麓から山頂にかけての一帯に、人口50万の超デラックス(冗談でなく、実際に県が言っていた)な高原観光都市を造るという壮大な計画を進めていました。こうした両者の考えの一致から浅草-桐生-赤城山山頂をつなぐ交通網の整備が始まり、1957年7月に利平茶屋駅-赤城山頂駅を繋ぐケーブルカー「赤城山ケーブルカー」が誕生しました。

 しかし、国鉄の上野ー前橋の急行列車の方が早く赤城山についたことやマイカーの普及により赤城山ケーブルカーの利用者は激減し、開業から10年後の1967年には運休、翌68年6月をもって廃線となりました。

遺構を辿る

 それでは、実際にケーブルカー跡を辿ってみます。今回は赤城山頂側より下っていきます。かつての赤城山頂駅は現在「赤城山頂記念館 サントリービア・ハイランドホール(休業中)」として駅舎時代の面影を残しています。

赤城山頂記念館(旧赤城山頂駅)
この建物から奥が桐生市です

 こちらの駐車場に車を置き、建物の裏手に回っていきましょう。建物の裏手には当時のプラットフォーム後が残っていますが、旧駅舎の北及び西側の下屋は撤去されています。現在、建物の改修が行われていますが、下山できるようなのでプラットフォーム跡を下っていこうと思います。

 それでは、ここからは写真で実際に辿った道のりを見せていこうと思います。


プラットフォーム跡の急な階段。以前より荒廃も進み、最大傾斜55度でなかなか怖い

もう一つの目的の御神水看板。
300m先にあるようです。

少し下ると、草木が道にも生い茂ってきます

150mくらい下りました。
階段が少し崩落しています

かつて使われていた電柱が根元から折れて倒れていました

250mくらいまで来ました。
鉄道跡が終わり、パイプはしごを渡ってさらに進みます

水の音を頼りに山道を進んでいきます。

ついに御神水にたどり着きました! 右から御神水、知恵の水、美人の水の三種類あります。

赤城山の伝説

 さっそく、御神水をいただいていきます。キンキンに冷えた天然水は、300mの急こう配を下った体に染みわたり、おいしさ以上の感動を届けてくれました。

 この御神水がいつ整備されたのか、いつから存在するのか、調べても一切わかりませんでした。ただ、一説には赤城山の名前の由来は、天皇や貴族に献上する浄水「アカ」から来ているといわれており、この御神水が山の名がつく前から存在していたのかもしれません。また、1988年(結構最近)にはこの御神水を飲んだ人の前に神が降臨したという話が残っているなど、さまざまな伝説が語り継がれています。

空のボトルに入れていただきました。この直後スマホを下に落としました。

 目的を果たしたので、ゆっくり戻っていきます。せっかくですから、さっき見えた鉄道跡なども寄りながら帰ります。


石に腰掛け御神水を仰ぎ、周りに目をやると鉄道跡と山岳信仰の祠がちらほら見られました。諸行無常を感じる瞬間でした。

上りと下りが交差する位置の線路跡。5m程度はありそうな巨大さには驚かされます。

登山道の看板、桐生方面の駅跡地「利平茶屋」は現在キャンプ場になっています。

電柱の折れていたところまで戻りました。行きは気づきませんでしたが、2本折れています。
ゴールはすぐそこですが、傾斜がきつく足腰にきます。

 そんなこんなでどうにか赤城山頂まで戻ってこられました。急げば往復1時間程度の道のりですが、傾斜が体に気持ちの良い負荷を与えてくれます。

 ぜひ今これを読んで赤城山ケーブルカーと御神水を知った方も、元から知っていた方も見に行ってみてください!!(御神水に落としたスマホは壊れましたので、荷物にはくれぐれもお気をつけて)

 今後もニッチな桐生のスポットを紹介できたらなと思います。それでは、また次回もお楽しみに。

赤城山頂記念館から一望できる桐生市。運がよければ雲海が…
【情報】

赤城山頂駅記念館 サントリー ビア・ハイランドホール(休業中)
群馬県前橋市富士見町赤城山鳥井峠
027-287-8444


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学生団体 Playlist」は、群馬大学理工学部の学生で立ち上げた団体です。団体名には、音楽を集めるように桐生の魅力を集めて紹介していこうという思いを込めています。理工学部のキャンパスがある桐生市を盛り上げていくことを目指しています! 桐生市役所による学生×桐生つながるプロジェクト『桐生つながるラボ』に所属しているメンバーがたくさんいます。