前回は料理、前々回は釣りのことについて書かせていただきました。今回はそんな2者にハマって気づいた共通点について。

 意外な組み合わせに思えるかもしれませんが、ルアー(擬似餌)作りとお菓子作り、大きく共通する点があります。それは「本物を使わずに、いかに本物に近づけるか」を追求する創作活動であるということ。

 ルアーは、魚の目には餌に見えるものであればよいのですが、ただ形をまねするだけでは成立しません。魚の動きや光の反射、水中での動き方、色彩まで、本物の生き物が持つ要素を捉えてデフォルメする必要があります。「魚は何をもって魚と認識しているのか?」自然界のデザインを模倣しつつ自分なりの工夫を加えることで、魅力的なルアーが完成します。

 一方で、お菓子作りも同じように「本物らしさ」を追求する面があります。例えば昔のかき氷のシロップやグミ、あめといったお菓子は、味は一緒で色が違うだけ。でも何故か不思議と、赤色ならイチゴ、黄色ならレモン、といったように感じることができます。ケーキやチョコレートでは、果物や花の形をデフォルメしたものが多く存在し、ここでも、いかに本物を使わずに再現するか。

 「人は何をもっておいしさや、感動を味わうことができるのだろう?」

 最近はお菓子売り場に行くと、目の前のお菓子の向こうにいる現場の技術者の方々に思いをはせることも多々あります。

 モノを作っていると手のひらと頭の中は結局いつも忙しい。

 こうした創作の楽しさは、現代の便利すぎる暮らしとは対照的に感じることがあります。スマホを開けば、欲しい情報や商品がすぐに手に入り、SNSでは効率的で手っ取り早い方法が次々とシェアされ、時短や合理性が重視される世の中。

 もちろん、それは生活を豊かにしてくれる側面もありますが、時間をかけて何かを作り上げることの価値は、いつの間にか見失われがち。

 ルアー作りやお菓子作りのように、手間と時間を惜しまず、自分の手で試行錯誤しながら理想に近づけていく作業には何物にも代えがたい喜びがあります。効率とは正反対の遠回りにも思えるこの創意工夫の営みが、心の豊かさにつながればよいなと思うこの頃です。

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