毒蛇咬傷(どくへびこうしょう)は一般の人にはあまりなじみのない言葉ですが、文字通り毒蛇に咬(か)まれることを示しています。英語では″snake bite〟「ヘビ咬傷」ですが、特に毒蛇venomous snakeによる咬傷を指します。ただ、無毒ヘビによる咬傷も含むため、単にヘビ咬傷ということもあります。もちろん無毒のアオダイショウであっても咬まれれば傷ができ出血もしますが、家で消毒しておけば大丈夫です。郊外ではマムシもヤマカガシも身近なヘビで、農作業中にマムシに咬まれるのは珍しくありません。ただ、ヤマカガシは手を出さないかぎり咬まれることはないので、ほとんど心配ありません。

 街の中で生活していてマムシに出合うことはほとんどありませんが、河川近辺には生息しているため、河川敷で犬の散歩中に足を咬まれる事故が時々起きています。これはサンダルを履いている場合だけですが、犬も咬まれることがあります。犬の場合は顔か前足の受傷がほとんどです。ネコの場合はほとんど顔です。水田を含め水のある場所ではサンダルで草むらに入るのは咬まれる危険が高いといえます。

 昼間は道路など開けた所にはほとんど出てきませんが、郊外では家の近くに水田や川、山などの近くでは、夜には道路だけでなく、家の庭や駐車場などにも出てくるため、足を咬まれる事故がしばしば起きます。最近はキャンプなどが人気で、多くのキャンプ場は川や山の近くにあるため、当然マムシも生息しています。河原でバーベキューをしていて、足を咬まれることもあります。今年は花火を見に行って足を咬まれた例や夜にカブトムシを探しに森へ行って手を咬まれた例もあります。ただ、暗いのでヘビを確認できないことが多く、そのような場合は虫刺されと間違われることもしばしばです。

 咬まれた瞬間は、チクッとした痛みだけで、その後徐々に腫れてきます。自然があるところはマムシがいる可能性があるため、必ず靴を履き、キノコ採りなどのときには棒などでマムシがいないのを確認してください。

 毎年3000人以上がマムシに咬まれています。死亡する人は少ないとはいっても毎年5人ほどが亡くなり、重症例はかなりあります。私たちは抗毒素血清を製造するために必要な蛇毒を採取しています。マムシは小型で、あまり力がないため、ハブよりずっと採毒しやすく、毒ヘビの中では最も扱いやすいヘビですが、毒の強さはハブの2倍ほどで、危険な毒ヘビであることに間違いはありません。10月いっぱいは活動していますので、足元には注意してください。

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