七つそろうと願うがかなう―。県内の七つの神社を巡り、神様の力が宿るという神玉(かみたま)巡拝。伊勢崎神社(伊勢崎市)→進雄神社(高崎市)→富士浅間神社(藤岡市)の3社までを巡った前編に続き、今回の後編では残りの4社と、上州神玉実行委員会事務局で聞いた「上州神玉巡り」全体の魅力もお伝えします。

 【参考】七つそろえて大願成就!上州神玉巡りに挑戦しよう〈前編〉(2025年6月21日号)

上州神玉巡り後編スタート!

④ 日本一の大黒様がお出迎え【中之嶽(なかのたけ)神社(下仁田町)】

  藤岡を抜け、妙義山が見えてくると、山坂道に入ります。妙義山の西側の山肌を縫うように走る、つづら折りの細い道を行くと、突如視界が開け、右手の山腹に巨大な大黒様が目に入ります。午後1時15分、中之嶽神社に到着。

妙義山の大自然の中に鎮座する中之嶽神社

 社殿の後ろにそびえる巨岩、轟岩(とどろきいわ)がご神体。ご祭神は日本武尊と空海が奉斎したとされる大国主。2005年、境内に高さ20㍍の日本一の大きさを誇る大國主大神像が建立されました。黄金色に輝く、その姿はインパクト抜群、小づちではなく、剣を持つ、珍しいお姿です。悪霊を払ってくれそうですね。

黄金に輝く「日本一のだいこく様」

 こま犬ならぬ大黒様の像のある社殿に参拝し、社務所で神玉、コラボ御朱印をいただきました。振り返ると、「せっかく下仁田町、日本一のだいこく様中之嶽神社に来たんなら、絶品本場下仁田の味噌おでん食べていきなさい」というお触れ書きが。参道にある中之岳ドライブインです。みそおでんは1皿2本300円。大黒様に見守られて食す、みそおでんはまた格別の味わいでした。甘じょっぱいみそだれは県民のソウルフードですもんね。

 神玉は日本一の大國主大神像と日本神話の聖地、出雲大社ゆかりの二重亀甲剣花菱紋。

 妙義山の麓には、道の駅みょうぎ、妙義山パノラマパークなど、ひと休みに最適な施設もあります。

みそおでんがおいしい中之岳ドライブイン
【情報】

中之嶽神社
甘楽郡下仁田町上小坂1248
0274・82・5671
対応時間/午前9時〜午後5時。
駐車場500台。


⑤ 利根沼田の総鎮守/【榛名神社(沼田市)】

 午後1時40分、中之嶽神社をたち、沼田市の榛名神社へ。70㌔、110分。今回最大の移動距離です。まっすぐ向かえば、午後3時30分には到着予定。ここで半時ほど過ごし、みどり市の貴船神社へ午後5時までに行く(ナビによると所要時間は50分)となるとぎりぎりです。巡拝1日目は榛名神社で終了としましょう。明日、貴船神社を参拝し、前橋東照宮で7社達成とします。

 下仁田町から沼田市へは秋間、榛名、箕郷と群馬の三大梅林として有名な地域を抜け、国道17号に入り、渋川から昭和村の利根沼田望郷ラインを通るルート。風光明媚(めいび)な山道を通りますが、中でも「日本一美しい村連合」加盟の昭和村を走る望郷ラインは絶景の連続。ビューポイントが数カ所あり、晴れていれば周辺の山々が遠望できます。取材日は曇っていてかすかに望める程度でしたが…。

 閑話休題、午後4時、榛名神社到着です。途中、ビューポイントに立ち寄ったため、若干遅れ気味。沼田市に鎮座する榛名神社は(高崎市の榛名神社とお間違いなきよう)、代々沼田城主の崇敬を受けてきました。1615年に真田信之公が社殿を改築、安土桃山文化を今に伝える社殿です。本殿御扉の上には、真田家の家紋「六文銭」が描かれているとのことです。

真田信之公改築の榛名神社社殿

 見どころの一つが面面美様(めめよしさま)という石碑。本殿北側の石宮群の一番左にありました。線彫りの石の面で、面々美様をなでた手で自分の顔をこすると美人になるといういわれがあります。

美人になるとのいわれがある石碑

 長い年月、多くの人になでられた結果、顔の部分、特に目の所が鈍く光っていました。美人になるなら、美男にもなるかなと、自分の顔を入念にこすってみました。果たしてその結果やいかに。同僚の判断にゆだねることにしましょうか。

 神玉は真田家の家紋、六文銭が描かれています。

 貴船神社は時間切れで明日にしたので、これぞ沼田のご当地パンという、みそパンを買い、沼田城址の沼田公園でいただきました。折しも時はマジックアワー。本丸跡に再建された望楼を望みながら、ソフトなフランスパンに挟まれたみその風味を味わいました。沼田城主の真田信之、その妻、小松姫も、まさか400年後に、沼田城でみそパンをほおばる酔狂人が現れようとは、想像もできなかったでしょうね。悠久の時の流れを感じました。

沼田公園は真田氏のビジュアルがいっぱい
沼田名物みそパン
【情報】

榛名神社
沼田市榛名町2851
0278・22・2655
対応時間/午前9時30分~午後5時。駐車場40台。


⑥ 願いをかなえる水の神様【貴船神社(みどり市)】

 関東地方を干ばつから守ってきた水の神様を祭る貴船神社。桐生タイムス社からは30分ほど、午前9時に到着です。

水の神様を祭る貴船神社

 水の浄化力から厄除け、開運、心願成就の神として、衣食住の源である水をつかさどることから家内安全、商売繁盛、交通安全の守護神としても信仰を集めています。

 水の神様が鎮座する貴船神社ならではのおみくじが「水みくじ」。境内の霊泉にくじを浮かべると水の霊力で文字が浮かんでくるというもの。徐々に結果が見えてくる、ワクワク感がたまりません。

霊泉につけると文字が浮かんでくるおみくじ

 神玉は貴船神社に祭られる水をつかさどる竜神様が描かれています。

【情報】

貴船神社
みどり市大間々町塩原785
0277・73・3631
対応時間/午前9時~午後5時。駐車場80台。


⑦ 大改修で前橋の新名所に【前橋東照宮(前橋市)】

 貴船神社から前橋東照宮までは約30㌔、1時間。午前10時30分着。日本一安いといわれる遊園地、るなぱあく向かいに鎮座しています。

本殿を覆屋に納めた、前橋東照宮

 徳川家康公を御祭神として、家康の孫、松平直基公が1624年に福井県内で創建。松平家の移封とともに、川越を経て、現在の地に移転したのが1871年。2021年秋には、モダンな新社殿が完成しました。無事長久、開運厄よけ、除災招福など幅広いご利益があります。

 社務所内にはカフェ「ラ・ヴィゴットin大手町カフェ」があり、参拝後にコーヒーやイタリア料理を楽しむことができます。オーナーシェフ岩﨑利哉さんの母方の実家は桐生市、不思議な縁を感じました。

社務所内にあるイタリアンカフェ「ラ・ヴィゴット」
オーナーシェフ岩﨑利哉さん

 社務所で神玉、巡拝御朱印を拝受し、禰宜(ねぎ)の瀬尾直史さんから巡拝達成証明書をいただき、上州神玉巡りは無事終了。

 神玉は徳川家の家紋で、東照宮の象徴でもある三葉葵(みつばあおい)が描かれています。

【情報】

前橋東照宮
前橋市大手町3-13-19
027・231・2031
対応時間/午前9時~午後5時。駐車場40台。


前橋東照宮禰宜の瀬尾さんにお話を伺いました
神玉巡拝って何? 始めたきっかけは?

 上州神玉巡りの立案者、前橋東照宮禰宜の瀬尾さんにお聞きしました。

前橋東照宮・瀬尾直史禰宜

神玉巡拝のきっかけ

 古くから大願成就を祈り、神社を巡拝する風習がありましたが、参拝の証しとして神玉を授与する神玉巡拝を最初に始めたのが、茨城県日立市の大甕(おおみか)神社で、2020年1月のこと。以降、全国に普及し、現時点で13の地域で行われています。

 上州巡拝のスタートは2022年8月で、5番目。茨城県の神社と交流のあった瀬尾さんが「広い群馬県を巡拝することで、その地域のことをよく知ってもらおう」と、群馬県神職青年会の有志に声をかけたのがきっかけ。7社参加したのは偶然で、「ドラゴンボールを意識したわけではありません」とのこと。結果的に「ドラゴンボールみたい」とブレイクしたのは、神様のお導きではないでしょうか。

神社ごとに特色のある神玉/専用ケースも

 群馬中に散らばる、七つのドラゴンボールならぬ神玉。アニメのドラゴンボールは、オレンジ色の半透明の玉ですが、神玉は直径約1.5㌢ほどの木製。表には神社の印、裏には各神社と関わりのある象徴が各社色を変えて描かれています。初穂料は500円。

 神玉を入れる専用ケース(初穂料500円)も用意したことが上州神玉巡拝の特徴です。いやが上にもコレクション意欲がかき立てられますね。

 前橋東照宮ではこれまで約2万体の神玉を授与しているとのこと。他の神社も同様とすると、全部で14万体ほど授与されていることになります。神玉が普段は訪れることのない神社に立ち寄るきっかけになっているようです。

佐々木茜さんとのコラボご朱印もスタート

 専用ケースに加えて、伊勢崎神社禰宜の齋藤宏平さんの関わりから、完売作家として知られる、群馬県出身の美術作家・佐々木茜さんとのコラボ巡拝御朱印の授与が、2024年1月から始まりました。

佐々木茜さんコラボの上州神玉七社巡拝御朱印

 各神社由来のメインキャラクターと鳥居、赤城山、榛名山、妙義山の上毛三山がデザインされています。七つ並べると一つの絵として完成するので、さらにコレクション熱が高まりますね。蛇腹状になる、専用の台紙(300円)もありますよ。

今後の展開は?

 今年1月に、人気インフルエンサーが上州神玉巡りを紹介してくれたおかげで、一気に巡拝が増えたそうです。「一時的なブームに終わらせることなく、末永く続けていきたい。別な7社で上州神玉巡り第2弾ができれば」と瀬尾さん。ぜひ、今後の展開に期待したいですね。

 ちなみにお話を伺った瀬尾さんの役職は禰宜。宮司と禰宜の違いは、簡単に言うと、宮司が社長、禰宜が部長とのことです。

上州神社巡拝〜神玉巡り〜
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上州神玉巡拝を終えて

 全国をドライブしていて、いつも思うことですが、どんなに山奥にも集落があり、人の営みがある、そんな当たり前のことに素直に感動してしまいます。

 今回の神玉巡拝もそう。有名な観光地はもちろん、無名であっても、素晴らしい景色や風物にたくさん巡り合いました。巡拝するにつれ、願い事が研ぎ澄まされ、進むべき道が開けていくような、そんな不思議な気持ちにもなりました。

 ぜひ、皆さんも筆者が体験したような「不思議な気持ち」を共有してみませんか。さあ、上州神玉巡り出発しましょう。

 「上州神玉巡り」の冊子は各神社で無料で手に入れることができます。今回、上州神玉実行委員会事務局のご厚意により、20部いただきました。桐生タイムス社窓口で配布いたします(先着順とさせていただきます)。