大泉町といえば、ブラジルのイメージが強い街ですが、それ以外の飲食店も元気なエリアです。今回、「ブラジルだけじゃない〝食と歴史〟を巡る旅」を敢行しました。

ブラジルカラーの駅舎/東武西小泉駅

 群馬県南東部にある大泉町。電車では新桐生駅から東武線で約40分で東小泉駅に着きます。ブラジルカラーで知られる西小泉駅へはここで乗り換えが必要です。

 路線図で西小泉駅は小泉線の「ひげ」のように分岐していて、これには深い意味があることを旅の途中で知りました。その理由は後半で触れることにして、まずは腹ごしらえからスタートです。

駅の案内表示も6カ国語表記

❶どらクレープが大人気/フルーツサンドみるも

 西小泉駅から続く「いずみ緑道」沿いにある、地元で知られるフルーツサンド専門店。どら焼きクレープ発祥のお店としても有名で、自家製マスカルポーネクリームをたっぷり使ったクレープは大人気。訪問時も店前には行列ができていました。

バナナマスカルポーネクリーム

 いただいたのはバナナマスカルポーネクリーム(363円)。甘すぎないマスカルポーネクリームと上品にスライスされたバナナの相性は抜群。追加料金でトッピングすることもできます。

【情報】

フルーツサンドみるも
大泉町西小泉3-13-2
0276・55・5474

11時〜なくなり次第終了
水曜・木曜休み


❷160年以上続く老舗/うなぎ小堀

 利根川沿いにはたくさんのうなぎ屋さんがあります。うなぎ小堀は創業160余年の老舗。明治初期に川魚問屋として創業されました。風格のある店構えののれんをくぐると広々とした落ち着いた店内においしそうなうなぎの香りが漂います。

 6代目店主の小堀光紀さんは静岡の問屋で修業を積んだそうです。国産の良質なうなぎしか使わないのがポリシーで、風味、うま味を引き出す秘伝の調理法で炭火の香ばしさと甘辛いタレの相性が抜群です。お弁当の電話注文も受け付けています。

お取り寄せもできます
【情報】

うなぎ小堀
大泉町朝日3-16-17
0276・62・3134

11時半〜14時、
17時〜なくなり次第終了
木曜・第3日曜休み。


❸新鮮な魚料理が評判/海と大地の食卓 ツカノマ

 店主・塚原さんは大泉町出身で、「おいしい魚料理を食べられるお店をつくりたい」と今年5月にオープンしました。シックな店構えで木目調の店内は天井も高く、アットホームな雰囲気です。豊洲市場で仕入れた新鮮なお魚を良心的な価格で提供しています。新鮮でうまい魚が食べられると評判でリピーターも多いお店です。お昼時はいつもにぎわっています。

年内のランチ営業は27日まで

 一番人気は「豊洲より旬のお刺身定食」(990円)。マグロに加えて店主おすすめの旬のお刺し身がついてランチタイムはごはんのおかわりも無料。炊き込みご飯にすることもできます。

【情報】

海と大地の食卓 ツカノマ
大泉町中央3-6-19B
0276・55・6665

11時〜15時、17時〜22時
日曜休み


❹群馬唯一の「ブルーシール」で沖縄気分/ブルーシール 群馬大泉

 沖縄を中心に展開するアメリカ発祥のアイスクリームチェーン「ブルーシール」。群馬県では唯一のお店です。アメリカンでポップな店内はTシャツやトートバッグ、タオルなどのグッズも並んでにぎやかです。アイスだけでなくクレープやアップルパイも楽しめます。「塩ちんすこう」「黒糖」「紅イモ」「シークヮーサーシャーベット」など沖縄ならではの珍しいフレーバーも。

 アイスのラインアップは約20種。いただいた「塩ちんすこう」は砕いたちんすこうが入っていて濃厚でなめらか。沖縄に来た気分に浸れます。店長おすすめは「島パインココナッツ」。地元のブラジル人にも人気だとか。12月19〜21日の3日間はクレープ90円引きキャンペーンもあるそうで、このタイミングで足を運んでみるのもいいかも。

かわいらしい店がまえ
オリジナルグッズも販売
【情報】

ブルーシール 群馬大泉
大泉町富士1-752フォリオ大泉SC別棟
0276・55・1444

11時〜20時(LO19時45分)
月曜休み(祝日の月曜は営業し、翌火曜が休み)


幻となった「仙石河岸線」と大泉町の歴史

 路線図で「ひげ」のようになっている「西小泉駅」は実は、町の中心部を抜けて利根川を渡り、熊谷まで結ばれる計画でした。町の中心部を南北に縦断するいずみ緑道はその名残です。

 この路線は「仙石河岸線」と呼ばれ、戦時中、国策で太田市内の中島飛行機(現SUBARU)の工場と熊谷を結び、物資や人を輸送する計画だったのです。ところが、計画の途中で太平洋戦争が終戦を迎え、先行していた熊谷から妻沼を結ぶ路線だけが東武熊谷線として運行されることに。利根川には建設された橋だけが残りました。

 余談ですが、ポツダム宣言受諾後、大泉町にはアメリカ軍が進駐し、キャンプ・ドルウという兵たんの拠点基地になりました。この跡地が三洋電機の群馬製作所につながり、現在のパナソニックの工場になっています。歴史をさかのぼると、米軍施設で創業された「ブルーシール」が大泉町に開店したのも必然だったのかもしれません。

 さて、東武熊谷線もモータリゼーションの波にはあらがえず不採算路線になり、1983年に廃止されました。戦後、何度か地元からの要望もあり、計画の遂行が模索されましたが、「幻の路線」となってしまったのです。

 西小泉駅が東武小泉線にぶらさがるように走っているのはその名残。そして、大泉町にはもう一つ、「仙石河岸線」の遺産があります。それが利根川沿いに残る1本の橋脚です。場所はいずみ運動公園の近く。まるで製鉄の高炉のような形の橋脚が1本だけ屹立(きつりつ)しています。そばに立って利根川の向こうを眺め、この路線がもし開通していたらまた違った歴史をたどったかもしれないと思うと感慨深いものがあります。

【取材協力】東武鉄道

埼玉方面に作られた橋脚
(すでに撤去)
唯一残る橋脚
【情報】

東武熊谷妻沼線橋梁跡
いずみ運動公園の近く


 大泉町はブラジル文化だけでなく、歴史、食文化など魅力にあふれた町です。次の休日には、ぜひ〝食べ歩き&歴史散歩〟の旅に出かけてみてはいかがでしょうか。