ただひたすら、共に夢を追いかけた―
国宝
任侠(にんきょう)の一門に生まれ、数奇な運命をたどり天涯孤独となってしまった喜久雄(吉沢亮)は、上方歌舞伎の名門の当主・花井半二郎(渡辺謙)に才能を見いだされ、思いがけず歌舞伎の世界へ飛び込むことに。喜久雄は半二郎の跡取り息子・俊介(横浜流星)と兄弟のように育てられ、生い立ちも才能も異なる二人はライバルとして互いに高め合い、芸に青春をささげていく。そんなある日、事故で入院した半二郎が自身の代役に俊介ではなく喜久雄を指名したことから、二人の運命は大きく揺るがされる。
原作者・吉田修一が3年間歌舞伎の黒衣をまとい、楽屋に入った経験を書き上げた同名小説を、『フラガール』の李相日監督が映画化。主人公・喜久雄を吉沢亮、喜久雄の生涯のライバルとなる俊介を横浜流星、喜久雄を引き取る歌舞伎役者・半二郎を渡辺謙、半二郎の妻・幸子を寺島しのぶ、喜久雄の恋人・春江を高畑充希が演じた。脚本を『サマー・ウォーズ』の奥寺佐渡子、撮影をカンヌ国際映画祭パルムドール受賞作『アデル、ブルーは熱い色』を手がけたソフィアン・エル・ファニ、美術を『キル・ビル』の種田陽平が担当した。また、四代目中村鴈治郎が本作の歌舞伎指導に入り、本編に俳優としても参加。緻密で繊細な所作を女形演じる俳優陣へ擦り込み、作品を高めている。
血筋と才能、歓喜と絶望、信頼と裏切り。何のために芸にしがみつき、国宝へと駆け上がるのか。圧巻のクライマックスに目が離せない。