足利市が世界に誇る歴史・文化遺産の「史跡足利学校」。1549年にフランシスコ・ザビエルによって「日本国中最も大にして、最も有名な坂東の大学」と紹介されたことはみなさん、ご承知の通り。国宝書籍4種77冊、約500年前に作られた日本で最も古い孔子像と1668年に建てられ、同じく日本で最も古い孔子廟、同年に造られた学校門を持つなど知れば知るほど魅力的なところです。今回は足利学校についてちょっと「お勉強」してみましょう。
時代を超えて学びを支えた場所
日本最古の学校 国指定史跡 足利学校
創建はいつか
足利学校がいつ創建されたのかは現在でもはっきり分かっていません。「今後、はっきりしたらいいな」と思わせる魅力ある最大の謎です。
諸説はあります。まず奈良時代の「国学の遺制説」、平安時代の「小野篁説」、鎌倉時代の「足利義兼説」などが主なものだそうです。これらの説は同学校内の復元建物・方丈でパネル展示されているので、足を運んでみてください。
同学校が栄えた戦国時代から江戸時代は「鎌倉大草紙」(戦国期ごろ)をもとに小野篁が創建したというのが定説だったとのことです。篁が同学校をつくるため連れてきたか、派遣した家来の子孫が同学校の役職のひとつである「家抱(かぼう)」につき、学校周辺に住んでいたということで同学校に残る江戸時代の絵図にもその名が記されています。


年表に載る、そして隆盛期へ
歴史が明らかになるのは室町時代の1439年に関東管領の上杉憲実(のりざね)が、現在国宝に指定されている書籍を寄進し、鎌倉円覚寺から僧・快元を招いて初代の庠主(しょうしゅ=校長)として学校経営にあたらせ同学校を再興させてからです。

応仁の乱以後、戦国時代も足利学校は学問の場として栄え、最盛期となって学生は3000人いたといわれています。戦国時代に戦火に遭わず、守られたのは易学を学んだ同校出身者が戦国大名のもとで、戦の方法や時期の決定などを進言する重要ポストの軍師の役割を担っていたからともいわれています。

同学校9代目庠主の三要(さんよう)は江戸幕府を開いた徳川家康の学問の師となりました。また、寺社の取り締まりや出版、外交などにもあたっていたそうです。三要は家康に同学校の存続を願い、100石の領地を得ました。そのかわり、その先1年を占った年筮(ねんぜい)をしたため、江戸城に届けていたそうで、江戸時代、同学校で占いを行った筮室は現在も孔子廟の中にあります。
同学校と江戸幕府との密接な関係は復元建物方丈にある「尊牌室」に並ぶ3代将軍家光から11代将軍家斉までの位牌(いはい)からうかがえます。幕府に修復費用を出してもらうなど特別な保護を受け続けたことから歴代将軍の位牌を安置し、礼拝することになったということです。
すべて江戸時代につくられたもので、そういわれてから改めて見ると「すごいな足利学校」との気持ちがわいてきました。

国宝書籍
足利学校が所蔵する国宝書籍は、中国の春秋時代から梁までの約1000年間の代表的詩文人の作品を800編ほど集めた詩文集宋刊本・文選(もんぜん)、中国の周時代の易占いの書「周易」に、魏の王弼(おうひつ)と晋の韓康伯(かんこうはく)が注をつけ、唐の孔穎達(くようだつ・くえいだつ)が疏をつけた宋版・周易注疏(しゅうえきちゅうそ)、中国の周時代末から秦・漢時代の礼儀作法や釋奠(せきてん)等の儀礼を記した宋版・礼記正義(らいきせいぎ)、中国前漢の孔安国の注をもとにして、唐の孔穎達が疏をつけた宋版・尚書正義(しょうしょせいぎ)の4種です。いずれも南宋時代(1127〜1279年)に刊行されたものということです。疏は注釈という意味ということです。

中でも木版印刷された「文選」は初印で、世界にただ一つの存在だそうです。同じ版で作られた南宋版本は10点ほど存在しているそうですが、ほかはすべて後印で、同校で所蔵する書籍が最も古いものだということです。
これらの国宝は通常見ることができませんが、企画展などで展示されることもあります。今後、そうした企画展が行われる際は、桐生タイムス紙面で紹介しますので、足を運んで見てください。前回の国宝展は多くの人が訪れていました。
伝統行事
足利学校には秋を中心に「曝書(ばくしょ)」や「釋奠(せきてん)」など長く続く伝統行事があります。
曝書は簡単に言うと書物の虫干し。江戸時代から行われてきたという記録があります。所蔵している貴重な古書を守り、後世に伝えていくためのもので毎年10〜11月にかけて、書物にダメージを与えない条件の整った日に行っています。

場所は方丈の書院という部屋で敷き紙の上に書物を並べ、職員の人がページをめくりながら綴(と)じ糸の状態やカビなどの傷みがないかなどをていねいに確認します。昨年は国宝「周易注疏」も対象になりました。10年以上、取材に行っていますが、とても風情のある光景が広がります。タイミングが合えば、一般の参観者も書院の外からではありますが、見学できます。
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釋奠は毎年11月23日に実施される儒学の祖、孔子とその高弟をまつる儀式で昨年で118回目となりました。昨年はこの伝統行事を次世代につなげていくための行事「こども釋奠」を経験した20代前半の女性2人が振り袖姿で同儀式を進めるうえで重要な役の祭官を務め、話題となりました。儀式は鐘の音を合図に始まり、雅楽が響くなか、祭官が独特の祭器を使い、米、塩、鯛、野菜、牛肉などをささげる供饌(きょうせん)の儀、飲み物をささげる執罇(しっそん)の儀や祝文朗読などが行われます。

親しまれる学校に
2022年から足利学校の業務の一部が足利市観光協会に委託となり、新たな取り組みが始まりました。中でも個人的にいいなと思ったのが有料参加者に渡すシール状の「學生証」の発行。日本遺産のロゴマークと学校門がデザインされたもので、取材にいくとこのシールを胸や腕に貼っている人をよく見かけます。「記念になりますよ」と話してくれた遠方からの参観者もいました。校内にある実が落ちないという「不断梅」をデザインしたお守り、フランシスコ・ザビエルにちなんだ「金平糖」などの販売や期間限定も含む御朱印もあります。また、敷地内にある稲荷社をきれいにリニューアル。中がよく見えるようにし、絵馬の販売にも力を入れています。


足利の夕暮れ後を楽しんでもらおうと始まった「足利灯(あか)り物語」のメイン会場にもなっているほか、所管している市教育委員会も方丈の畳の間を積極的に活用。昨年は方丈でのオペラやクラシックコンサートなどの取材にも行きました。
早ければ来年度、この方丈のかやぶき屋根のふき替えがはじまります。新しいカヤで屋根がふっくらした姿になるのは今から楽しみです。
史跡足利学校
足利市昌平町2338
0284・41・2655
受付時間4〜9月は午前9時〜午後4時半。10〜3月は午前9時〜午後4時/参観料は個人の場合一般480円、高校生240円、小・中学生120円(市外の人)、20人以上の団体割引もある




