政府は、紙の教科書と同じ位置づけで扱う「デジタル教科書」の関連法案を閣議決定した。法案が成立すれば、デジタル教科書は正式な「教科用図書」として認められ、検定や無償配布の対象となる。2028年度の検定を経て、2030年度から小学校で順次導入される見通しであり、教育のあり方そのものが変わる転換点に差し掛かっている。
(2026年5月2日付「みんなの学校新聞」記事から)
今回の制度改正で大きく変わるのは、教科書の「形」を学校側が選べるようになる点だ。これまでは紙が前提だったが、今後は「紙のみ」「紙とデジタルの併用」「完全デジタル」の3形態が選択肢となる。すでに「GIGAスクール構想」によって端末やネットワークといった環境整備はほぼ完了しており、焦点は「使えるかどうか」から「どう使うか」へと移っている。
このニュースを受け、みんなの学校新聞編集部では2026年4月21日~5月1日の期間、インターネットを通じた簡易アンケートを実施した。



「併用派」が約8割
アンケート結果を分析すると、回答数41件と限定的ではあるものの、望ましい形態として「デジタル教科書と紙の教科書の併用」を挙げる声が75・6%を占めた。次いで「紙の教科書のみ」が19・5%となり、完全デジタルを望む声は4・9%とごく一部にとどまった。
回答からは、単純な「賛成・反対」を超え、「何をデジタル化し、何を紙で残すべきか」を模索する実態が浮かび上がった。
特に多かったのが、学習効果に関する声だ。「紙のほうが頭に入る」「直接書き込むことで記憶に残る」「見返しやすい」など、紙ならではの利点を評価する意見が目立つ。ページをめくる感覚や余白への書き込みといった物理的な体験が、学びの本質につながっていると感じる人が多いようだ。
一方で、デジタル教科書についても「動画や音声で理解が深まる」「読み上げ機能が便利」といった利点を評価する声は少なくない。特に英語や図解を伴う学習において、紙にはない多角的な学びへの期待が見える。
また、身体面への影響を懸念する声も根強い。「ランドセルが軽くなる」というメリットを歓迎する一方で、長時間の使用による視力低下を心配する声が上がった。さらに、「動作が遅い」「バグがある」「バッテリー切れ」といった、システム上の安定性を不安視する意見も寄せられた。
10代の回答者からは「調べ物のたびにタブを開閉するのが面倒」といった声もあり、操作そのものが学習のストレスになりかねない実態もうかがえる。
60代以上の回答者からは「先生と子どもが目を合わせる時間が減る」「授業が流れ作業になりそう」といった教育の本質に踏み込む意見も寄せられた。
「併用」が抱える線引きの難しさ
こうした「併用志向」が多数を占める一方で、現場運用の難しさも指摘されている。
文部科学省の「デジタルな形態を含む教科書の発行・採択等の指針に関する検討会議」の審議委員を務める群馬大・情報学部の柴田博仁教授は、「併用といっても、どこで線引きするかが非常に重要」と指摘する。「併用」の形をとった場合でも、紙とデジタルの使用比率で意味合いが変わってくるという。授業の中で「(指導する際に)紙、デジタルのどちらを使うのかを現場の教員が正しく選択するのは容易ではない」と柴田教授は話す。

小学校の検証で浮き彫りになった弊害
さらに柴田教授は、実際の検証授業で明らかになった弊害についても言及した。
算数で「リンゴを数える」課題が出た際、デジタルには「簡単に書き直せる」メリットがある半面、本来の学習目的から乖離(かいり)した動きも見られたという。たとえば、算数の問題を解くことよりも「きれいなリンゴを描くこと」に固執したり、色やサイズを変える操作そのものに熱中したりしてしまうケースだ。これでは一見集中しているように見えても、算数の学びにはつながっていない。
える操作そのものに熱中したりしてしまうケースだ。これでは一見集中しているように見えても、算数の学びにはつながっていない。
今後の展望と課題
今後、デジタル教科書を導入するにあたっては、現場での「具体的な使い分けの指針」や「学習効果の精査」が不可欠となる。 便利さや効率化だけでは測れない学びの価値をどう守るのか。デジタル教科書をめぐる議論は、単なるICT化の是非ではなく、教育そのものの在り方を問い直す段階に入っている。
(編集部)
本記事は「みんなの学校新聞」で読むことができます。
https://np-schools.com/news/18036
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