ちょっとビターで刺激的なアンチ・シンデレラストーリー
ANORA アノーラ

  全編iPhoneで撮影した『タンジェリン』、貧困層の人々の生活を6歳の少女の視点から描いた『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』など、アメリカ社会の「声なき声」を丁寧にかつユーモラスに描いてきたショーン・ベイカー監督。本作で描かれるのは自らの幸せを勝ち取ろうと全力で奮闘する、ロシア系アメリカ人の若きストリップダンサー、アノーラの等身大の生きざま。身分違いの恋という古典的なシンデレラストーリーを現代風にリアルに描き直し、清濁併せのむ人間らしさにあふれている。

 主役アノーラ、通称アニーに抜てきされたのは『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』などのマイキー・マディソン。彼女に夢中になるお調子者のロシア新興財閥の息子イヴァンには、本作が英語劇初挑戦となるマーク・エイデルシュテイン。

 NYでストリップダンサーをしながら暮らすアニーことアノーラは、職場のクラブでロシア人の御曹司、イヴァンと出会う。彼がロシアに帰るまでの7日間、1万5千㌦で契約彼女になったアニー。パーティーにショッピング、ぜいたくざんまいの日々を過ごした二人は休暇の締めくくりにラスベガスの教会で衝動的に結婚! 幸せ絶頂の二人だったが、息子が娼婦と結婚したとうわさを聞いたロシアの両親は猛反対。結婚を阻止すべく、屈強な男たちを息子の邸宅へと送り込む。ほどなくイヴァンの両親がロシアから到着。厳しい現実を前に、アニーの物語の第二章が幕を開ける。