さまざまな理由で十分な義務教育を受けられなかった人たちに教育機会を確保するため教育機会確保法が2017年に施行され、21年の菅内閣の時にすべての都道府県・政令市に夜間中学を少なくとも1校設置する方針が示された。現在、夜間中学は19の都道府県と13の指定都市に53校設置されている。群馬県では今年4月に県立みらい共創中学校(伊勢崎市、飯嶌幸校長)が開校した。県立の夜間中学の開校から8カ月。生徒たちがどのような環境で学校生活を過ごしているのか。同校を取材した。(2回に分けて掲載します)
(2024年11月29日付「みんなの学校新聞」記事から)
開放的な教室環境で62人の生徒が生き生きと学ぶ

同校の始業時間は午後6時から。5時すぎに記者が訪れると案内された教室のフロアにはすでに登校している生徒たちが授業の準備をしたり、談笑したりしていた。
ワンフロアにすべての機能が集積されていて、入ってすぐに食事や談笑できるスペースが設けられている。1年生から3年生までの教室は壁をつくらないオープン型の造りで、とても開放的だ。

木目調の書棚には参考書や書籍、雑誌、漫画などが置かれ、図書館と教室が一体化した雰囲気だ。少人数授業を行う個別指導教室や相談室が周りを囲んでいる。
入学式当初35人だった生徒数は62人(中1/33人、中2/20人、中3/9人)と大幅に増えた。「生徒の8~9割が外国籍の方です。(外国人の多い)伊勢崎・太田から通う生徒の割合が高いですが、(遠方の)高崎や前橋から通学する人もいます」と校長の飯嶌幸先生。
今年4月に開校した際、3学年同時に開設した。学年の割り当ては入学時に事前面談を行い、それまでの学習歴や今後の進路希望などをヒアリングしながら、基本的に何年生でスタートするかは本人の希望を最優先して決めているという。入学の受け入れは随時行っている。1学年35人という定員を設けているため、定員を満たした時点で募集は停止する。ただし、3年生に関しては卒業までの期間が短いため定員関係なく9月以降の受け入れはしていないそうだ。
入学できるのは義務教育年齢を超えた人(満15歳以上)で年齢の上限は設けていない。現在10~70代の生徒が在籍している。
生徒の一人、葛尾あゆみネイデさん(58)はブラジルの出身で25年以上日本で生活してきた。現在は太田市で公立小学校のバイリンガル教員をしながら、同校に通っている。数年前、ドキュメンタリー番組を通じて夜間中学に興味を持ったそうだ。群馬にも夜間中学ができることを知り、入学を決めた。
「学校はとても楽しいですよ。普段は教える立場だけど、生徒の立場になれるというのも面白いですね」と葛尾さん。その充実ぶりは表情が物語っていた。(つづく)



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