少子化による人材不足が深刻化する両毛地域の製造業界。外国人労働者への依存が進む一方、言葉や文化の壁も課題となっている。そうした中、太田工科専門学校(太田市東本町)は「自動車系スーパー技能技術者」の育成を掲げ、外国人留学生を対象に日本語や専門技術、さらには生活マナーまで徹底的に指導。即戦力として企業へ送り出す取り組みが注目を集めている。今回、みんなの学校新聞編集部は同校の特色などを2回にわたって報告する。
(2025年9月3日付「みんなの学校新聞」記事から)
外国人の技能技術者を育成する専門学校として開校


両毛地域は、自動車産業を軸とした製造業が盛んな地域だ。近年、この地域の経営者を悩ませているのが人材不足である。少子化の進行に伴い、高校卒業者数が減少しているうえ、工業高校など専門学科に通う生徒の4年制大学進学率が上昇し、卒業後に就職を希望する生徒は減っている。
太田工科専門学校の竹内敏彦校長も「120社ほど企業を回っていますが、中小規模の企業ほど高校生を採用できない」と採用現場の声を語る。全国的な人手不足のなかで、「外国人労働力に依存せざるを得ないのが企業の現場の実情です」と竹内校長。

(同校ホームページから)
一方、外国人を採用しても文化や習慣の違い、言葉の壁が原因でトラブルが生じるケースも少なくない。こうした社会課題の解決を目指して太田工科専門学校は2022年、太田商工会議所やスバルなど地域産業界の支援を受け、開校した。2年間しっかりと外国人を教育し、卒業後に即戦力として活躍できる「自動車系スーパー技能技術者」を育成するのが同校の理念であり、目標だ。同校の方針に賛同する企業は広がりを見せ、2025年7月現在、地元企業を中心に57社が後援会に入会している。
専門学科の指導は、後援会の中心企業であるスバルのOBが担い、校長・副校長など管理職は公立高校や中学校の校長経験を持つベテランが支えている。
開校から2年間はコロナ禍の影響もあり、入学者数は定員120人を下回ったが、卒業生の就職率は100%を達成。その実績が外国人コミュニティーで口コミとして広まり、現在の5期生・6期生は定員を充足している。国籍はネパールやバングラデシュが多い。「1期生、2期生がネパール出身者だけだったので、まさに口コミの足跡のようなものですね」と竹内校長は笑う。
「日本式」の体得に注力し、即戦力を養成する
中心となる学科は自動車テクノロジー学科。授業はすべて日本語で行われるため、入学時点で日本語による十分なコミュニケーション能力が必須条件だ。
「全国各地の日本語学校で1、2年勉強してから入学するケースが多いですね」と竹内校長が説明するように、県外から来る学生が約9割を占める。
入学試験は随時実施されている。試験科目は日本語力を確認する面接試験で、全国各地から受験希望者がいるため、オンライン入試にも対応している。合格者は翌年4月に入学する。
「実習生ではなく、日本企業に正社員として送り出すことが本校のゴール。だからこそ、自動車を中心とした工業系専門教育と日本語、さらに〝日本式〟(日本のルールやマナー)の体得に力を入れています」
ごみ出しのルールや夜間の集団行動、喫煙マナーなど、生活習慣や文化の違いが衝突を生むことは少なくない。同校ではそうした点についても教育を徹底している。特に時間感覚は重要だと竹内校長は指摘する。
「遅刻指導は徹底しています。日本は公共交通機関が分刻みで動く社会。一方、時間におおらかな国もあります。日本企業で働く以上、日本式の時間感覚を身につけることは不可欠です」
現在は技術者育成のTECコースに加え、日本語能力試験(JLPT)N1保有者を対象とした「ハイパー技術者育成EVコース」もスタートしている。まだ在籍者はいないが、来年4月からは日本人の高校生の受け入れも視野に入れている。
また、日本に初めて来る学生を対象にした日本語学科を開設し、卒業時までに日本語能力試験N3合格を目標に、就職に必要となる日本語力の養成を図っている。現在、この科には31人が在籍しているという。(つづく)
次回は実習クラスや日本語クラスの様子を報告する。
(編集部)
本記事は「みんなの学校新聞」で読むことができます
https://np-schools.com/news/15346
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