伊勢崎清明高校の軽音楽部が、中学生向けの学校説明会後に部活動を公開した。校内はドラムやギターの響きであふれ、さながらライブハウスのような熱気に包まれた。観客の中学生を引き込みながら演奏する姿、顧問の金子りえ先生が生徒と同じステージに立つ姿からは、音楽を通して生徒の可能性を引き出そうとする情熱が伝わってきた。(2回中の1)

(2025年9月30日付「みんなの学校新聞」記事から)


部活動見学は「熱狂空間」に

 9月20日午後3時すぎ。伊勢崎清明高校では中学生向けの学校説明会が終わり、部活動見学の時間を迎えていた。3階の多目的室Cの前は同校軽音楽部のライブを見ようとたくさんの中学生でごった返していた。ドラムやギターの激しい音、ボーカルの声。—学校という空間を忘れさせるほど、この場所だけはライブハウスのような熱気に包まれていた。

 「軽音部に興味を持った人?」。軽音楽部のバンド「LoteSt」でボーカルを務める3年生の新木春獅郎さんがステージから問いかけると、中学生からはたくさんの手が挙がった。「ありがとう!」と軽快に返し、観客とテンポよくコミュニケーションを取る。観客との対話で盛り上がっていくのも軽音ライブの魅力だ。

 「LoteSt」は「ぐんまハイスクールロックフェス」で準グランプリを受賞した実力派バンド。この日はサカナクションの 「新宝島」とVaundyの「怪獣の花唄」を披露し、観客の中学生もリズムに合わせて体を揺らし、声を上げて楽しんだ。受験を控えた中学3年生たちも、しばし受験の緊張を忘れて笑顔を見せた。

 「こんな開放的な雰囲気だと、受験生はみんな軽音に入りたいと思うんじゃないですか?」。そう問うと、バンド「Legacy」でドラムを務める2年生で副部長の田口美嘉さんは笑いながら答えた。

 「私も中学生の時に見学しましたけど、すごくテンションが高くて、入部してやっていけるのか不安になりました」

 田口さんは現在、美術部と軽音楽部を兼部。中学時代から「清明の軽音に憧れていた」という。

 「こういう自由な雰囲気を見れば、軽音だけでなく清明高校自体にも興味を持ってもらえると思うんですよね」と顧問の金子りえ先生は話す。

顧問の先生は「センセイでもなく、トモダチでもなく…センパイ!?」

 同校・軽音楽部は約50人の大所帯。

 新木さんはもともとサッカー部員だったが、1年の文化祭で先輩に誘われて歌ったのをきっかけに軽音楽部に転部した。父の勧めで中学時代にボイストレーニングを受けていた経験もあり、音楽の楽しさに火が付いた。

 「LoteSt」のドラム担当で同部の部長を務める2年生の大川陽翔さんは「なんでも屋」だ。音楽との付き合いは長い。小学生のころからドラムを始め、中学では吹奏楽部にも所属した。中学ではギターやベースにも手を伸ばしたそうだ。この日も、病欠したメンバーの代わりに急きょ「ベース」も担当した。

 大所帯の部を支えるのが同校の英語科教員でもある金子りえ先生だ。

 記者が金子先生を知ったのは今年3月に前橋で開催された軽音部主催のライブだった。

 薄暗く狭いライブハウス。鮮やかなライトに照らされ、マイクを握り椎名林檎の「丸の内サディスティック」を歌い始めた女性がいた。傍らにいた部員に「あのボーカルの人って誰?」と聞くと「顧問です」との答え。それが金子先生だった。ベースやドラムを担当する生徒たちも生き生きと演奏しているのが印象的だった。

 生徒のやろうとしていることを傍らで見ていて、何かあればコントロールする。記者の持っていたこんな「先生像」を金子先生はいい意味で打ち砕いた。

 同部2年生バンド「アトマワシ」のギター・ボーカルを務める齋藤さくらさんも「生徒と一緒に組んで、一緒になって盛り上がってくれて。練習の時もすごく楽しそうなんですよ」と金子先生のことを話す。「先生じゃないですよね。かといって友達でもない。憧れの先輩的な存在ですね」

※記事は教諭ではなく先生という敬称を使っています。
(つづく)

本記事は「みんなの学校新聞」で読むことができます
https://np-schools.com/news/15668


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