伊勢崎清明高校の軽音楽部が、中学生向けの学校説明会後に部活動を公開した。校内はドラムやギターの響きであふれ、さながらライブハウスのような熱気に包まれた。観客の中学生を引き込みながら演奏する姿、顧問の金子りえ先生が生徒と同じステージに立つ姿からは、音楽を通して生徒の可能性を引き出そうとする情熱が伝わってきた。
(2025年10月1日付「みんなの学校新聞」記事から)
生徒と一緒にバンドを組みたい

金子先生自身も太田女子高校時代、軽音楽部に所属しており、教員を目指した理由の一つが「軽音楽部の顧問をやりたい」という思いだった。しかし、初任校にも2校目の赴任先にも軽音楽部がなく、そんな気持ちも色あせていた折、3校目の伊勢崎清明高校に配属校が決まった。そして、運のいいことに軽音楽部の顧問を任されることになった。
「(軽音楽部の顧問に決まって)初めての部活に来たら、私、これやりたかったんだ」と眠っていた気持ちが目を覚ました。金子先生も一緒にやりたくなった。

「誰かバンドやってくれないかな」。3年前、そんな思いを生徒に投げかけたら、6人が手を挙げてくれたそうだ。こうして結成されたバンドが「トワイライトみそスープ」(通称「トワみそ」)だ。担当楽器や学年に縛られず金子先生と一緒に組まれたバンド。演奏したい曲ごとにメンバーが入れ替わるスタイルが特徴だ。メンバーの卒業と新規加入の入れ替わりを繰り返しながら、さながらバトンをつなぐように継承されてきた。
大川さんのように「なんでも」こなせるオールラウンダーにとって、「トワみそ」は最高の舞台でもある。「(大川さんは)ドラムだけでなく、ギターやベースの腕も存分に発揮していますよ」と金子先生。


部活動の働き方改革、教員の多忙化。教職は大変な仕事だという認識が社会に広がる中、金子先生は「多忙を楽しむ」ように部活動に向き合う。
取材した部員の中で唯一、金子先生の英語の授業を受けている新木さんは「授業の時も音楽やっている時ぐらいテンション高めですよ。でも、先生っぽくなくて、すごくフレンドリーな感じです」と証言する。

音楽を通じて子どもたちを輝かせたい
金子先生が高校の教員を志したのは、子どもたちの未来をつくっていく仕事に憧れていたから。
「高校生の時期って、社会に出ていく最後の砦(とりで)になる年代です。そこで経験することって、ものすごく人生の中で残っていくんですよね。だからこそ、その子たちの本来持っているものをきちんと輝かせて大人になってほしいなっていう思いがあります」
軽音楽部の顧問という立場は自分のやりたい教育が実践できる場だという。「音楽って心が開くし、魂が開いている感じがします。子どもたちがもともと持っているものが、さらけ出されて、キラキラするんです」

自分にスポットライトが当たり、認められる。それが自信につながっていく。これまで何度もそんな子どもたちを見てきた。
うれしかったこと、悔しかったこと、楽しかったこと、つらかったこと。さまざまな感情を心のどこかにしまい込んだ青春の記憶。「自分自身、高校時代にプライベートも含めて感じたことがあり、ずっとそれは残り続けます」。金子先生の心の中には今でもくっきりと高校時代の記憶が同居しているのかもしれない。だからこそ「先輩」にもなれる。
卒業後も帰ってきたくなるような部にしたい
海外に長い間住んでいるとみそ汁の味が恋しくなるという。日本人にとってみそ汁は「原点」だ。さまざまな具材が調和して共存しているみそ汁はまさに軽音楽部そのものであり、青春そのものだ。そして、放課後の部活動にこそ高校時代の青春がつまっている。たそがれ時を表すトワイライトは「放課後」を意味するのではないか。記者の悪癖で深い意味を求めて、「トワみそ」の命名由来を聞いてみた。
「特に意味があるわけじゃないと思うんですよ。当時の部員がなんとなくつけた名前です」と金子先生は笑った。「でも、そんな解釈もありですね。海外に出ると恋しくなるみそ汁みたいに、卒業後も清明の軽音の空気が恋しくなって帰ってきたくなるような、そんな部を作りたいですね」
※記事は教諭ではなく先生という敬称を使っています。
(終わり)
本記事は「みんなの学校新聞」で読むことができます
https://np-schools.com/news/15700
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