都道府県の高校入試で使用する調査書(内申書)の出欠欄を廃止する動きが全国で広がっている―。これは10月24日付の朝日新聞社の報道で明らかになったものだ。記事によると、2027年度入試までに約4割にあたる19都府県で出欠欄を設けない方針だという(群馬県は従来どおり出欠欄を残す)。出欠日数欄をなくす背景には、急増する不登校の生徒への心理的負担をなくすためなどの配慮があるとされる。みんなの学校新聞編集部ではこの報道を受け、10月28日~11月4日、インターネットを通じて読者アンケートを実施した。 

(2025年11月9日付「みんなの学校新聞」記事から)


出欠欄削除「反対」派が約7割 教育関係者の反対意見が目

 調査書から出欠欄をなくす動きについてたずねたところ、「反対」「どちらかといえば反対」と回答した人が全体の7割弱を占めた。一方で、「賛成」「どちらかといえば賛成」とした人は約3割にとどまった。

 職業・立場別に見ると、学校教職員、学習塾講師などの教育関係者は「反対」派が8割を占めた。

 一方、保護者層では賛否が拮抗(きっこう)。不登校の増加など家庭の事情を考慮すべきだとの意見がある一方、「出席を軽視すると子どもの責任感が育たない」との懸念も根強かった。

 反対の理由としては「社会に出れば出勤は最低限のマナー」「努力して登校している子どもが報われない」といった意見が目立ち、出席そのものを「社会性の基礎」と捉える見方が根強い。アンケートに回答した教職員の一人は「正当な理由もなく、安易に欠席を選択する生徒や保護者が増えることを助長するおそれがあり、学習の遅れや生活リズムの乱れ、学校行事などの運営にも悪影響が生じることが懸念される」とした。

 一方、「病気や不登校など事情がある子どもへの配慮」を求める観点から出欠欄の廃止に賛成する意見も少なくない。

 表向きは合否に影響ないと言われても、出欠欄があることで「欠席日数の多い不登校生徒の心理的負担はなくならない」としつつ、結果的に「不登校の生徒の進路の選択の幅が狭まってしまう」のではないかとの意見もあった。40代の保護者(女性)からは「不登校の子供が高校から再スタートする可能性を広げてほしい」という書き込みもあった。

 また別の観点からは、調査書に出欠欄が記載されると「欠席になることを気にして、発熱や体調不良なのにもかかわらず無理して出席する」風潮を生みだしかねないという懸念の声もあがった。

 調査書の出欠欄の有無をめぐっては、教育現場における公平性と不登校など生徒それぞれの多様な背景の尊重をどう両立するかが課題として浮かび上がった。

「出席日数で不利な扱いはしない」ことに賛成は約6割

 文科省は「出席日数に関しては中学の状況のみで不利な扱いをしない」ように求めているが、このことに関してどう思うかの問いに対しては、「とても良い」「ある程度良い」と答えた肯定派が全体の55・5%を占めた一方、「良くない」「あまり良くない」とする否定派も37%に上った。

 調査書(内申書)から出欠欄を廃止することに反対の立場の人のうち、38・8%が「出席日数に関して中学の状況のみで不利な扱いをしない」ことについては肯定的な回答(「とても良い」「ある程度は良い」)をした。

「出欠欄の有無」は教育の評価軸に関わる重要な視点

 今回の結果は「出席」をめぐっての価値観の違いを浮き彫りにした。

 「出席=努力や責任感の表れ」とみる立場からは、出欠欄が廃止されることで、「勉強や課外活動では目立った結果を残していないが休まず学校に通っている生徒」の評価指標を失うと指摘する意見もあった。特に教育関係者は、出席は評価の指標として重要だとみる向きが多かった。

 一方、「出席=個人の事情を踏まえて柔軟に判断すべきもの」という立場は保護者に多い。増加する不登校児童生徒への配慮を求める意見も目立った。

 調査書の「出欠欄の有無」については、「教育の評価軸をどう設計するか」という重要な視点をはらんでいる。日本の教育システムそのものの根幹が問われているといえる。

(編集部)

本記事はウェブでも読むことができます。また、ウェブでは、紙面で紹介できなかった「アンケート自由記述欄の意見(一部)」の掲載もあります。 https://np-schools.com/news/16268


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