地区内の公立高校の現状や課題を共有するため、群馬県教育委員会(平田郁美教育長)は10月16日、「県立高校の在り方に関する地区別情報交換会」を太田合同庁舎で初めて開催した。太田・館林・邑楽地区を皮切りに、県内8地区で10月から11月にかけて実施される予定だ。

(2025年10月17日付「みんなの学校新聞」記事から)

今後の県立高校の在り方を考える第一歩

 情報交換会には県議会議員や市町村長、市町村教育委員会の教育長、PTA関係者など約50人が出席。県教委からの説明や報告の後、出席者の質疑応答という流れで進行した。

 冒頭、平田郁美教育長は「今後の高校の在り方について、地域の人たちとゼロベースで考えていきたい。今回はその第一歩」とあいさつ。髙橋章高校教育課長が、社会環境の変化や生徒のニーズの多様化、少子化に伴う生徒減、教育のデジタル化など高校を取り巻く環境の変化を説明。「すべての子どもたちに公平で質の高い教育を行うために高校教育改革は必要であり、そのために地域の皆さんと情報を共有し、一緒に高校の在り方について検討する機会にしたい」と開催の趣旨を述べた。

進む少子化 26年度はピーク時から半減

 県教委によると、県内の中学卒業見込み者数は1989年度(平成元年度)の3万3859人をピークに減少を続け、2026年度(令和8年度)には1万6261人にまで落ち込む見通し。さらに14年後の2040年度(令和22年度)には約1万人まで減少すると予測している。

 太田・館林・邑楽地区では、2026年度の卒業見込み者数は3664人。2040年度には約4割減の2000人規模になると見込まれている。

太田・館林・邑楽地区では他地域への流出の状況も

 太田市内の公立高校の入試倍率は過去2年間で定員割れが続いた。館林・邑楽地区はさらに深刻で5年連続で1倍を下回っている。生徒減に加え、進学先の多様化も生徒募集に影響を与えている。

 県教委が示した資料によると、太田・館林・邑楽地区では伊勢崎市や桐生市など県内他地区の公立高校への流出が363人に対し、他地区からの流入は228人、県外の国公私立高校への流出が673人に対し、流入が62人と「流出超過」の状況だ。それに加え、県内の私立高校への進学者が386人に上る。

高校小規模化が及ぼす影響

 こうした状況の中で、仮に現状の高校数を維持した場合、小規模化の進行は不可避だ。

 地区内公立13校()の来年度の1学年の学級数は61学級を予定している。平均学級数は1校あたり4・7学級だ。県教委の試算では、2040年度に13校を維持した場合、1校あたり2・6学級まで減少し、多くの高校で3学級以下の状況が生まれるという。県教委の策定した「第2期高校改革推進計画」では、1学年あたり4〜8学級を「適正規模」と位置づけているが、この数字を大きく下回る。

 高校の小規模化が進行することで、クラス対抗行事や体育大会の種目数の縮減など学校活動の幅が限定され、部活動の維持も難しくなってくる。また、コース別・習熟度別のクラス編成や、専門の教員を配置し、すべての科目を開講することも困難になり、生徒の進路選択にも影響を及ぼすおそれがある。「小規模化により生徒同士が切磋琢磨(せっさたくま)する機会や多様な学びの実現が難しくなる」と指摘した。

 県教委は現状の分析にとどまらず、今後の話し合いのヒントとして、魅力ある高校づくりの事例も示した。他県の取り組みとして、複数の専門学科を併置する栃木県の「未来共創型専門高校」や、AI、IoTなど先端分野を総合的に学べる大分県立情報科学高校など、新たなタイプの高校や学科を紹介した。

地域の意見を聞く場を設けた点を評価

 出席した市内の公立高校の同窓会関係者は「教育行政は上意下達で進められることが多い中、県教委が今後の高校の在り方について意見を聞く場を設けたことに意義を感じる」と今回の開催を評価した。

 阿部知世県議は「少子化の深刻さは理解していたが、具体的な数字を示したことで現状認識ができた。当事者の声を拾って議論するプロセスは必要だと思うのでその意味ではよかった」と語った。

 太田・館林・邑楽地区は参加者が多数になるため、10月31日にも開催された。10月21日には伊勢崎・佐波地区の情報交換会が県総合教育センターで行われた。以降の予定については県ホームページなどを通じて順次公開していくとしている。

 また「情報交換会」終了後、準備が整った地区から第三者の有識者を座長とする「地区別検討会」を開催。地域関係者を集め、地元の高校の未来像についてゼロベースで議論する場を設ける方針だ。     (編集部)

地区内公立13校の内訳

▼太田地区の公立高校(7校)
 県立太田高校、太田女子高校、太田東高校、新田暁高校、太田工業高校、太田フレックス高校、市立太田高校
▼館林・邑楽地区の県立高校(6校)
 館林高校、館林女子高校、板倉高校、館林商工高校、西邑楽高校、大泉高校

本記事は「みんなの学校新聞」で読むことができます
https://np-schools.com/news/15947


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