今回は周囲を水田や畑などに囲まれ、のどかな空気に包まれた足利市東部、大久保町にあって、かつては子どもたちが学んでいた校舎を再生して生まれ変わった「大久保分校スタートアップミュージアム(OBSM)」を紹介します。現代アートの美術館として定期的な若手アーティストの展示やミュージアムショップと喫茶室、そして「ふらり」と寄ってもシルクスクリーン制作などが体験できる工房がある「作品にであえて、体験できる」魅力的なミュージアムです。せっかくなのでオリジナルグッズづくりを体験してみました。
旧校舎を活用したアート拠点OBSM
地域と人をつなぐスタートアップミュージアム
小学校分校の建物/美術館に再生
OBSMが誕生したのは2022年4月です。足利市が行った未利用公共施設の利活用にかかる民間事業者の公募で「おもい・つむぎ財団」がスタートアップミュージアム事業を提案し、採択されたものです。開館にあたってはクラウドファンディングを行い、多くの人の協力を得て施設の改修費にあて、現在の姿になりました。
美術館として生まれ変わった建物は、1929年に建てられ、2004年の閉校まで市立毛野小学校大久保分校として近隣の小学1~3年生が学んでいたところです。オープン以降はここで学んだ近隣住民のみなさんが定期的に除草作業をしてくれるなど地域に愛される場所にもなりました。


展示室・創作工房・カフェの3つの機能
OBSMは大きく分けて展示室、一般公募で「つくりえ—TSUCULIE」の愛称がついた創作工房、ミュージアムショップ・カフェスペースの「大久保茶館」の三つです。展示室では3月29日まで、横井まい子さんの個展「ばくと夢見る」が開かれています。
作家との交流も魅力/体験工房も人気
常駐しているスタッフは美術家でOBSMディレクターの秋山佳奈子さん、昨年4月から同市の地域おこし協力隊員となった市川千夏さん。展示会は年間6回が基本。秋山さんが気になる作家のイベントに足を運び、声をかけて招いています。

取材中にちょうどOBSMにやってきたみどり市の男性に「このミュージアムの魅力は?」とたずねたところ「定期的にいろいろな作家さんの展示をしていて、遠出しなくても気になる作家さんの作品を見ることができることや作家さんと話ができる機会もあることですね」と話してくれました。加えて「体験工房があるので子どもと来ても楽しめますし、これまで猫をプリントしたTシャツやトートバッグを作りました。自分でつくれるところが最大の魅力ですね」と熱く語ってくれました。

体験できる美術館の魅力
創作工房「つくりえ」でシルクスクリーンに挑戦

さてさて、続けて創作工房「つくりえ―TSUCULIE」でシルクスクリーン制作に取り掛かりましょう。その前に工房でできる体験メニューを簡単に紹介します。
版画を中心に多彩な体験メニュー
基本的には版画で①シルクスクリーン②銅版画技法のドライポイント③石こう刷り④木版リトグラフ—などです。展示会会期中には出展作家によるワークショップもあって、これまでに「石研ぎ」「アルミでのオーナメント」「しちりんを使っての焼きもの」などのメニューが提供されたそうです。
代表的体験メニューのシルクスクリーンは用意してある版を利用する方法や自分で描いた絵や写真をデジタル製版して体験することもできます。ペットの写真をTシャツに印刷など記念に残る作品を作りに来る人が多いそうでオリジナルグッズを作りたい人にはおすすめです。
中には子どもが3歳のころから毎年訪れ、子どもの描いた絵を印刷し、その成長ぶりを残す人もいるそうです。
20人くらいまでなら対応できるということなので、サークルなどの仲間と一緒に作品づくりを楽しめます。市内の小学校などに出向いての体験提供もできるそう。群馬県内でもあまり遠方でなく、日程などが合えばスタッフが出向いて指導してくれるそうです。まずはインターネットで「大久保分校スタートアップミュージアム」で検索し、内容を見てください。
取材後にシルクスクリーン体験
自分でやってみなくては楽しさを伝えられないと、取材終了後、「きょう、できますか」と二人に相談。「できますよ」と即答してもらい、「ふらりと来ても本当にできるんだな」と感激。
絵心がまったくないので、2歳5カ月の孫とLINE電話してる際に撮ったスクリーンショットをスマホがイラスト化してくれたものを原画とすることに。

「左上にあるじいさん(私)の顔は消して」と市川さんに依頼し、メール送信。
ちょっと出かけてから戻ってみると「できてますよ」と版を見せてもらい「こうなるんだ」と感激。実際は10分もあれば製版できるそうです。

まずは印刷する素材とインクの色を選択。私はきんちゃく袋Mとブルーを選びました。その後、市川さんから「シルクスクリーンとは」の説明を受け、いざ作業に。
まずはゴムを使って版を枠に固定する作業。

そのあとインクを版にのせるのですが、分量がいまひとつつかめなかったので市川さんにお任せ。
そしていよいよ印刷。均一な力を広い面に伝えられるスキージー(へら)を使ってインクを2回、伸ばしました。

その後、版を静かに上げて作品とご対面。「初めてにしてはなかなかうまくいったかな」と得られた満足感。料金は2200円でした。

◇ ◇
帰宅後、孫に「どうぞ」とあげると「じいじ、ありがと♡」と言われ、本当に見て、体験して楽しめる美術館だと思いました。
大久保分校
スタートアップミュージアム
足利市大久保町126
0284・22・7868
開館日は金・土・日曜と祝日(開館時間は午前10時~午後5時)、月・木曜日は予約制工房使用日。入館料は募金制。体験料金はホームページで確認してください。




