止まっていた時が動きだす
人はなぜラブレターを書くのか

 古民家ダイニングを切り盛りする寺田ナズナ(綾瀬はるか)は、ある青年宛てに手紙を書き始める。24年前、17歳のナズナ(當真あみ)は、毎日同じ電車で見かける名前も知らない青年にひそかな恋心を抱いていた。一方、その青年・富久信介(細田佳央太)は進学校に通いながらプロボクサーを目指し、学校帰りにボクシングの練習に励む日々を送っていたが、2000年3月8日に発生した地下鉄脱線事故の犠牲となる。そして2024年、信介の父・隆治(佐藤浩市)のもとにナズナからの手紙が届く。父・隆治は手紙の中に亡き息子の生きた証しを確かに感じ、息子の知られざる青春の断片と成長を知る。やがて隆治は、ナズナに宛てて手紙をつづりはじめる。

 『舟を編む』の石井裕也監督が綾瀬はるかを主演に迎え、2000年3月に発生した地下鉄脱線事故にまつわる奇跡のような実話をもとに描いた人間ドラマ。学生時代のナズナを『ストロベリームーン 余命半年の恋』の當真あみ、信介を『町田くんの世界』の細田佳央太、信介が通うボクシングジムの先輩で後に第17代WBC世界スーパーフライ級チャンピオンとなる川嶋勝重を菅田将暉、綾瀬演じるナズナの夫・良一を妻夫木聡、信介の父・隆治を佐藤浩市が演じた。主題歌はOfficial髭男dismの「エルダーフラワー」。本作は現在もご健在の多くの方々の人生に大きく関わる作品でもあるため、制作は関係各所の意思をひとつひとつ入念に確認しながら慎重に進められていった。