各神社ゆかりの動物にかたどった台紙に朱印や文字を入れた、ユニークな御朱印です。 2023年8月に栃木県の9社で始まり、 現在は14社に広がっています。 新緑の栃木路を北から南へ、悪戦苦闘の5日間、 14社制覇の旅をドキュメント風にまとめました。 前編・後編の2回でお届けする今回はその前編❶〜❹です。

DAY1
旅の初めに型抜き御朱印発案者に聞く
御朱印をブームから文化へ

出会いは偶然、白鷺神社のパンフレット

  型抜き御朱印を知ったのは、まったくの偶然から。私事ながら、娘が初詣に行って運気が上がったという栃木県上三川町の白鷺(しらさぎ)神社に、休日のドライブがてら出かけた際、目に留まったのが「型抜き御朱印」のパンフレットでした。頒布している神社は14社。台紙が縁のある動物にかたどられた、ユニークな御朱印です。

 これまで、群馬県道の駅ご当地カレー、上州神玉、行田御墳印と完全制覇を達成してきた筆者がビビッとこないはずありません。むくむくとやる気がこみ上げてきました。まずは、始めたきっかけは何か、それを知りたいといろいろと調べると、どうやら白鷺神社が音頭をとったもようです。

 改めて同神社禰宜(ねぎ)の上野敬則さんにアポを取り伺うことに。桐生タイムス社から一般道で1時間50分、76㌔の道のり。途中には14社の一つ・佐野市の賀茂別雷(かもわけいかづち)神社もありましたが、まずは発起人に話を通してからと泣く泣く素通り。

いざ、❶白鷺神社へ

 白鷺神社の境内に入ると社殿右手に巨大な剣が。鎮座1220年の記念に奉製した「平和の剣」で、触れることで災い事を断ち切り幸福を結ぶ御利益があるとか。参拝後、上野さんにお話を伺いました。

ブームから文化へ

 近年、御朱印ブームといわれて久しく、特に平成から令和への御代(みよ)替わりの際には、全国の神社に多くの参拝者が訪れ、御朱印を受けて回ったといいます。

 コロナ禍で参拝者は激減しましたが、各神社が特色ある御朱印に力を入れたことで満足度が向上し、リピーターも増加。そこで、全国に先がけ「型抜き御朱印」を提供し、栃木県の神社をアピールするとともに、御朱印を文化として定着させようと、2023年8月に9社で型抜き御朱印の頒布をスタートし、現在は14社に拡大。初穂料は一律500円です。

 14社は栃木県内各地にあり、「巡る中で土地ごとの魅力や思わぬ出会いを楽しめるかもしれません」と上野さん。ちなみに上三川町の一押しグルメは、ソース味の真っ黒な「黒チャーハン」だそうです。

 また、「各神社へ出かける際は電話やインスタグラムなどで事前に確認しておくと安心です。神社によっては対応できない日もあります」と話していました。

 この最後の文言が後々に思わぬ波紋を呼ぶことになろうとは、このときは知る由もありませんでした。

 取材後、〈しらさぎ〉をかたどった御朱印をいただき、まずは1社。神社の対応時間は午後4時までがほとんどのため、1日目はここで終了。

【情報】

白鷺神社
上三川町しらさぎ1-41-6
0285・56・4553
〈御朱印対応時間〉
9時〜16時。休務日なし。


DAY2
いよいよ型抜き御朱印巡り本格始動
朝日森天満宮~下野星宮神社、3社制覇

ルート選定。まずは県南から

 いよいよ型抜き御朱印制覇の旅、本格始動です。

 まずはじっくりと栃木県内に散らばる神社の位置とにらめっこ。ルート選定です。大まかに区分けすると、14社は、栃木県の県南、県央、県北の各地域に分散しています。桐生から足利に入り、県南から県央へと攻める、桐生から足尾を経て日光に入り、県北から県央へと攻める、この二つのルートがすぐ頭に浮かびました。

 県南は足利2社、佐野2社、県央は白鷺神社を除いて、真岡1社、益子1社、芳賀町2社、下野1社、宇都宮1社、県北は日光2社、那須塩原1社です。県央とはいっても、真岡、芳賀、益子は県東が正しいかも知れません。

 2日目は、勝手知ったる県南ルートを攻略することにします。⓬足利伊勢神社❺島田八坂神社❷朝日森天満宮❸賀茂別雷神社の4社攻略が目標だったのですが…。

足利で痛恨の2連敗

 桐生タイムス社を午前10時30分スタート。⓬足利伊勢神社までは17㌔、33分。JR足利駅北口、足利学校近く、閑静な住宅街の一角に鎮座していました。「1151年(仁平元年)創建。足利庄の伊勢宮として、足利氏累代より尊崇を受ける。内宮・外宮・月讀宮(つきよみのみや)が鎮まり、『足利のお伊勢さん』と呼ばれています」という由緒を頭に入れ、参拝。参拝後、勇躍して社務所へ。

 何とそこで目にしたのは「本日は社務の都合により御朱印などの対応をお休みさせていただきます。またのご縁の折に…」と無情の張り紙。そういえば白鷺神社の上野禰宜さんが、事前確認をと念を押していたっけ。

 気をとり直して足利にあるもう1社、❺島田八坂神社へ向かいます。5㌔、13分の距離。開けた住宅街の一角にありました。駐車場から社務所を眺めると窓にはシャッターが。張り紙もありません。ちょうど昼時だったので、昼休みかとも思いましたが…。まさかの2連敗。心が折れそうです。やはり事前連絡は必須を再確認。

佐野で巻き返し、2社制覇

 この日の予定3社目は佐野市の❷朝日森天満宮。16㌔、28分の行程です。JR佐野駅の北西、佐野高校西側にありました。天満宮ですから、学問の神様として有名な菅原道真公がご祭神。境内には天神様のトレードマーク「なで牛」もありました。翡翠(ひすい)色のとても神秘的ななで牛です。つるつるした牛をなで、拝殿に参拝。社務所には幸いにも宮司の永澤宏昭さんがいらっしゃいました。

 同社の型抜き御朱印は鳥の鷽(うそ)。鷽替(うそかえ)神事で知られているからです。鷽替えとは、鷽鳥の模型を新しいものと取り換えることで、1年間の悪い出来事やついてしまったうそを天神さまの「誠」に替え、今年の吉運を願う天満宮特有の神事のこと。主に菅原道真を祭る天満宮で行われ、太宰府天満宮発祥とされます。

 型抜きの図案は、同神社の鷽替え神事用の鷽を型抜きした、とても愛らしい御朱印です。これで2体目。

【情報】

朝日森天満宮
佐野市天神町807
0283・22・04340
〈御朱印対応時間〉
9時~17時。休務日なし。



 これでやっと2体。先を急ぎましょう。次は同じ佐野市でも葛生方面にある❸賀茂別雷神社。初日に通り過ぎた神社です。朝日森天満宮からは8・2㌔、15分。近くにも同じ読み方の神社がありますが、型抜き御朱印をいただけるのは東武佐野線多田駅向かいにあり、産泰(さんたい)神社の看板もある方、間違いなきよう。

 社殿、社務所は国道293号から少し山道を上った先にありました。拝殿前では2人のライダーが拝殿を背景に愛車の記念撮影の真っ最中。その誘導をされていたのが、同神社禰宜の毛利晴喜さん。毛利さんによると、神社を活性化させるため、ツーリングオアシスや御刻印などさまざまな取り組みをされているとのこと。ツーリングオアシスは、道中の安全祈願が受けられ、ライダーが一息つける場所のこと。御刻印は専用の革製のお守りに参加の神社仏閣の刻印を自分で打ち、巡る順番や押し方によって自分だけのオリジナルデザインのお守りが完成する取り組みです。

ライダーにも人気の賀茂別雷神社
ツーリングオアシスとして認定

 型抜き御朱印も同神社活性化の一環として参加。型抜き御朱印のモチーフは八咫烏(やたがらす)です。八咫烏は、神武天皇の道案内をした三本足の霊鳥で、神社のご祭神である賀茂建角身命(かもたけつぬみのみこと)の化身とされることに由来しています。

 参拝後、3体目の八咫烏をゲット。毛利さんの参拝者に対する、さわやかな応対が印象的でした。

型抜き御朱印のモチーフは八咫烏
【情報】

賀茂別雷神社
佐野市多田町1506
0283・62・0641
〈御朱印対応時間〉
9時~17時。12時~13時休憩あり。特定の休務日はないが、不在日もあるので、事前問い合わせを。


不在を挽回。もう1社行けるぞ!

 賀茂別雷神社で2日目は終了の予定でしたが、足利の2社が不在でしたので、時刻はまだ午後2時。もう1社行けそうです。ここから東へ行って真岡市の大前神社か、北へ向かって下野市の下野星宮神社か、迷うところ。真岡へ行けば、近くの益子鹿島神社へも行きたくなりますが2社は時間的にも無理。下野市の❹下野星宮神社に決定です。

 同神社までは33㌔、50分。午後3時には着けそうです。道の駅を併設した北関東道壬生インターやコストコ壬生倉庫店の近く、周囲を田畑に囲まれていました。平日の夕方でしたが、カップルや女性グループでにぎわっていました。

 同神社は方位よけ、厄よけ、開運導きの神社として信仰を集めていますが、型抜きの図案は何と黄金の土竜(もぐら)。

 2015年(平成27年)年の秋の例大祭前日、境内の参道で発見された、黄金のモグラにあやかったそう。社務所前で、発見時のモグラを複製したものが展示されています。実物のモグラの剥製は、金色モグラの出現月の11月14日~21日に展示するとのことです。

黄金のモグラの複製

 参拝をと思い、拝殿を見上げると、しめ縄がヘビの形。鳥居にもヘビのしめ縄がかけられていました。ヘビは長寿や蓄財をつかさどる象徴です。「へび注連(しめ)縄」に触れ、運気上昇をお祈りしました。ヘビのしめ縄はこの周辺地域の数多くの神社で奉製されていましたが、現在は数社のみとなり、大変貴重なものとのこと。 訪れたら、鳥居や拝殿のしめ縄をとくとご覧あれ。 午後4時、無事、黄金の土竜を拝受。これで4体目。2日目はこれにて終了。

黄金のモグラの型抜き御朱印
【情報】

下野星宮神社
下野市下古山1530
0285・53・1706
〈御朱印対応時間〉
9時~16時30分。休務日なし。


▼前編はここまで

 この時点で4社制覇。足利の2社には空振りを食らったものの、めげずに4社を手中に収めました。2日目で「事前確認は必須」という教訓を得たはずが、3日目にまたしても同じ過ちを繰り返すことになります。人間、懲りないものですね。果たして残り10社、制覇への道のりはいかに? 

 次週、怒涛(どとう)の後編へ続きます。