個性豊かな動物たちをかたどった、栃木県の「型抜き御朱印」。前編では❶〜❹を紹介しましたが、後編は収まりきらず、予定を超えた拡大版となりました。留守で涙をのんだ神社への再挑戦、県北から県央を駆け抜けた充実の1日、そして14社制覇の瞬間まで―。悪戦苦闘の5日間の旅も、いよいよ完結。今回は後編❺〜⓮をお届けします。
DAY3
迷いがあだ!? 成果は島田八坂神社のみ
惨敗の3日目
迷いに迷って 足利の2社に決定
3日目は、前橋で仕事があったため、正午、前橋からのスタート。午後4時まで、残された時間は4時間。選択肢は二つ。足尾から日光へ出て、日光の2社を制覇するか、足利の2社を制覇するか。上武国道を走りながら、日光方面と足利方面の分岐点までさんざん悩みましたが、日光の2社が制覇できれば、那須塩原市の那須乃木神社へも行きたくなるのが人情、でも時間的には無理と判断。ならばと、本日は足利の2社に決定。その前に事前確認をするべきでしたが、この時はすっかり忘れていました。これまでの経験から、御朱印は行けばもらえるものと思い込んでいたからです。
まずは❺島田八坂神社へ
足利の島田八坂神社、午後1時40分着。東武伊勢崎線福居駅の近く。今回は社務所のシャッターも上がり、御朱印がいただけそうです。型抜きのモチーフは金の狛(こま)犬。約100年前に社殿に鎮座した、黄金の狛犬に由来。この黄金の狛犬は、明治初期に神社近くの遊郭から寄贈されたもの。かつて、例幣使街道沿いには宿場町があり、遊郭が8軒ほどあったそうです。


型抜き御朱印は写真の金狛犬のほか、デザインの異なる2種類があります。このほかサンリオキャラクターなど、数多くの御朱印がありました。
小堀巧人宮司は24社を兼務していることから、留守にすることが多いそう。この日は本当にラッキーでした。
5体目型抜き御朱印ゲットしました。

島田八坂神社
足利市島田町949
0284・22・4472
〈御朱印対応時間〉
インスタまたは電話で確認を。
満を持して臨んだ足利伊勢神社、またもや…
続いて、満を持して足利伊勢神社へ。4・9㌔、12分。ほどなくたどり着いた⑫足利伊勢神社。ああー何ということでしょう。またもや留守。無情にも同じ張り紙が。ぼうぜんとたたずむことしばし。やはり事前確認は不可避であることを痛感しました。
時刻は午後2時50分。どこへ向かうにも中途半端。じくじたる思いを胸に、桐生へ。3日目は1社のみで終了。
DAY4
充実の4日目。県北から県央へ、栃木県縦断
瀧尾神社~大前神社へ6社制覇
一路、日光 ❻瀧尾神社へ
4日目は午前8時30分スタート。できるだけ多くの神社を制覇するため、午前9時と同時に、この日行く予定の神社に事前連絡。幸いにもすべての神社で対応可能とのこと。みずみずしい新緑の中、国道122号を一路、日光へと向かいます。
瀧尾神社までは90㌔、1時間32分。同神社は日光とはいえ、旧今市市。足尾トンネルを抜け、インバウンドでにぎわう、東照宮、神橋の前を通り、旧今市市へ。日光街道沿いに鎮座していました。日光街道の宿場町だった、今市を守る総鎮守の社です。ここもツーリングオアシスの一つでした。日光には瀧尾神社と書く神社が複数ありますから、日光市今市という所在地で確認を。


型抜きのモチーフは熊猫、パンダです。宮司の田中教文さんによると、上野動物園の双子のパンダの御朱印を期間限定で授与したところ、大変好評だったことから、パンダを選んだとのこと。赤ちゃんパンダを抱いた、ほほえましい図柄です。
熊猫で6体目、ゲットです。

瀧尾神社
日光市今市531
0288・21・0765
〈御朱印対応時間〉
9時~15時。不定休。
二宮金次郎ゆかりの❼報徳二宮神社へ
日光市今市にはもう1社、報徳二宮神社があります。1・4㌔、4分。平日でも混み合う、道の駅日光ニコニコ本陣の裏手にありました。
同神社は神社名にもある通り学問・経営財福の神である二宮尊徳翁(金次郎)を祭る神社です。境内に入ると巨大な尊徳翁の座像と立像が目に入ります。樹齢212年の杉に彫刻したものだそうです。尊徳翁の遺体すべてを安置した、史跡二宮尊徳の墓もありました。


型抜きのモチーフは鳩(はと)。禰宜(ねぎ)の武内聡史さんによると、鳩は神のお使いだからだそう。実際に数十羽の鳩が境内で餌をおいしそうについばんでいました。
通算7体目ゲット、これでやっと半分。まだ先は長い、急ぎましょう。

報徳二宮神社
日光市今市743
0288・21・0138
〈御朱印対応時間〉
9時~17時。休務日なし。
乃木将軍を祭る❽那須乃木神社へ
県北のもう1社、那須乃木神社へ向かいます。43㌔、1時間15分。日光から栃木県を東へと横断して矢板市へ、北に方向転換して那須塩原市へとルートを設定します。午後0時10分着。
那須乃木神社は、乃木希典将軍の別邸が置かれた地に、殉死した、乃木将軍と静子夫人を祭神として建立されました。
境内には社殿のほか、愛馬「殿号(しんがり号)」のレプリカを納めた神馬舎や乃木将軍の石像、将軍ゆかりの品々が拝観できる宝物殿、別邸など、見どころがいっぱいです。社殿から別邸へと続く樹林は乃木公園として整備され、市民の憩いの場となっています。時間があれば散策するのも楽しいですね。宮司の渡健二さんによると、初詣には5万人ほどの参拝者でにぎわうとか。
ちなみに同神社と那珂川町の鷲子山上(とりのこさんしょう)神社、これから向かう真岡市の大前神社の3社は、栃木の最高位のご利益のあるトライアングルの神社としてPRしています。


閑話休題、型抜きは殿号がモチーフ。いななきを上げて、前脚を蹴り上げる、勇ましい姿をかたどっています。躍動感あふれる御朱印です。
これで8体目制覇。時刻は午後1時。ちょっと長居しました。

那須乃木神社
那須塩原市石林795
0287・36・1194
〈御朱印対応時間〉
9時~16時。休務日なし。
栃木を北から南へ ❾祖母井神社へ
この日4体目を拝受するため、急ぎ、芳賀町の祖母井神社へ向かいます。47㌔、1時間5分。栃木県を北から南へ移動します。ナビの案内するルートは、のどかな田園地帯を縫うように走る田舎道ばかり。決して観光目的では通らない道、かえって新鮮です。
同神社は道の駅はがのすぐ近く、芳賀町の中心である祖母井の町を見守る位置に鎮座していました。産業発展、厄よけ、方位よけ、安産、子育ての社として親しまれ、7月下旬に執り行われる祇園祭は、250年もの歴史がある、盛大なお祭りだとか。
宮司の栁田晋作さん によると、見どころは本殿左右の妻飾りに阿・吽(あ・うん)の一対配された、翼を持つ竜、飛竜の彫刻。神使として型抜き御朱印のモチーフにもなっています。あらゆる厄難・災難・方難を排し、幸運へと導いてくれるのだそう。


色鮮やかな飛竜が大きく口を開けた型抜き御朱印を無事拝受。この日5体目、通算で9体目です。ゴールが見えたような気がしてきました。

祖母井神社
芳賀町祖母井749
028・677・0277
〈御朱印対応時間〉
基本的に火・木・土・日・祝日の10時~15時。電話、インスタ等で確認を。
滑り込みセーフ、➓芳賀天満宮へ
時刻は午後3時25分。次に予定する芳賀天満宮の対応時間は午後4時30分まで。8・1㌔、11分、どうやら間に合いそうです。祖母井神社からさらに南西へと移動します。国道123号沿い、見晴らしの良い高台に鎮座していました。
祭神は菅原道真公。合格祈願、学業成就の神様として受験生の強い頼みの綱。境内には朝日森天満宮同様、なで牛がありました。こちらのは御神牛「天神様のお使い願掛け撫(な)で牛」とあり、耳元で願い事を唱え、頭をなでれば賢くなり、体の痛むところをなでれば、病気回復・身体健全になるとして古くから信仰を集めています。


この牛が型抜き御朱印のモチーフ。禰宜の越口政典さんによると、化粧まわしをつけた牛のデザインは型抜き御朱印スタート時点とは異なるものとのこと。迫力ある牛のデザインが印象的です。

通算10体目制覇。時刻は午後4時。本日はこれにて終了と思いながら帰途の道順に考えを巡らせていると、越口さんが「大前神社はこれからでも間に合うんじゃないですか」と、一言。調べると、大前神社まで9・6㌔、14分。太川陽介さんが「バス旅」の中でよく言ってたフレーズが頭をよぎりました。「その日に行けるところまで行く、これがバス旅の極意だ」。バス旅ではありませんが、間に合うなら、行くしかありません。
芳賀天満宮
芳賀町西水沼1723
028・678・1138
〈御朱印対応時間〉
9時~16時30分。休務日なし。
駆け込みで⓫大前神社へ
大前神社、午後4時20分着。境内に入ると、まず巨大なえびす様の立像に驚かされました。同神社の若宮社、大前恵比寿神社の「日本一えびす様」です。普段なら、じっくりと由緒書きなどを読みながら参拝するところですが、刻々と迫る終業時間、大前神社の社殿に参拝し社務所へ急ぎます。禰宜の栁田耕史さんが快く対応してくださいました。
大前神社のご祭神はだいこく様とえびす様。本殿、拝殿、幣殿は国の重要文化財に指定されているとのこと。特に御本殿の極彩色彫刻は必見の美しさ。
型抜き御朱印のモチーフは、拝殿にある雌雄の龍の彫刻、黄龍(おうりゅう)と青龍(せいりゅう)。最新のパンフレットには黄龍が紹介されています。彫刻にそっくり、まるで生きているかのようです。


そうそう、日本一えびす様は宝くじの高額当せんにご利益があるらしいですよ。お礼の絵馬が奉納されていました。
本日、6体目、通算11体目。時刻は午後5時。4日目はこれにて無事終了。

大前神社
真岡市東郷937
0285・82・2509
〈御朱印対応時間〉
8時30分~17時。休務日なし。
DAY5(最終日)
14社制覇まで、いよいよ残り3社
足利から益子、益子から宇都宮へ
三度目の正直、⓬足利伊勢神社へ
14社のうち、残りは足利伊勢神社、益子鹿島神社、今泉八坂神社の3社。午前9時になるのを待って、各社に事前確認。幸いにもすべて本日対応可。三度目の正直、まずは足利伊勢神社へ。
午前10時、桐生タイムス社をスタート。17㌔、33分。2日目同様、各社に参拝後、社務所へ。事前に電話していたものの3度目となるとちょっと心配です。おそるおそる社務所に目をやると、窓口がオープン、ほっと一息。最終日、幸先の良いスタートです。
対応してくださったのは、提箸照之宮司の奥様。型抜き御朱印のモチーフはご祭神「天照皇大神(あまてらすすめおおかみ)」の神使、鶏。天岩戸(あまのいわと)神話に登場する「常世の長鳴鳥(とこよのながなきどり)」に由来しているそう。


まずは1体目、通算12体目制覇です。

足利伊勢神社
足利市伊勢町2-3-1
0284・41・5347
〈御朱印対応時間〉
9時~16時、事前確認要。
焼き物の町・益子、⓭益子鹿島神社へ
気分よく、益子町へ向かいます。73㌔、1時間56分、14社制覇の旅、1番の長距離、安全運転で行きましょう。途中までは、初日の白鷺神社へのドライブと同じルート。下野市から益子町へ入ります。
午後1時10分、益子鹿島神社到着。真岡鐵道真岡線益子駅から益子町の中心部へ向かう道筋に鎮座していました。取材日はゴールデンウイークに開催した陶器市の準備の真っ最中。あちらこちらに駐車場の案内看板を見かけました。今年は陶器市初日の4月29日だけでも、5万人もの来場者があったとか。焼き物ファン必見のイベントなんですね。


鳥居横には「勝負必勝の神」ののぼり旗が目を引きます。必勝祈願、勝負必勝の神様として全国から多くの祈願者が訪れているようです。境内の一角には、厄が自身から去るように願いを込めて厄割玉を勝石(まさるいし)に投げて割る厄割玉投げ処もありました。
禰宜の小幡仁さんによると、型抜き御朱印のモチーフは鹿島の神様の神使、鹿。親子の鹿を描いた、ほほ笑ましい図柄です。
これで通算13体目、いよいよ14社制覇目前、でもちょっと。さびしいような気も…。

益子鹿島神社
益子町益子1685-1
0285・72・6221
〈御朱印対応時間〉
9時~16時30分。事前確認要。
ついに14社制覇、⓮今泉八坂神社へ
14社目は宇都宮市の今泉八坂神社。27㌔、50分、午後2時30分到着です。同神社はJR宇都宮駅近く、駅前から続くにぎやかな通り沿いに鎮座していました。周囲に建物が密集し、いかにも都市部の神社といった趣。
主祭神は須佐之男尊(スサノオノミコト)。ですが、宮司の葭田真彦さんの奥様によると、ペット参拝所があるのが他の神社との相違点。境内には崇敬者からペットの守り神として寄贈された「こま犬さん、こま猫さん」の像がありました。


同神社はまた、盲導犬育成支援にと、犬の型抜き御朱印を毎年4月下旬に限定数頒布しています。今年のデザインはラブラドルレトリバーの子犬を模したもので、黄色と黒の2種類。各700体で無くなり次第終了。初穂料は1体800円、うち400円を東日本盲導犬協会に寄付するとのことです。
型抜き御朱印のモチーフは、「こま犬さん、こま猫さん」を模した狛犬と狛猫。横を向いた犬と猫が仲良く並んでいます。午後2時38分、今泉八坂神社の型抜き御朱印拝受。この瞬間、長いようで短かった、全14社制覇の旅が無事終了しました。

今泉八坂神社
宇都宮市今泉4-16-32
028・621・0248
〈御朱印対応時間〉
9時~16時。休務日なし。
旅を終えて
初めての道、人との触れ合い
栃木県型抜き御朱印14社制覇の旅。一番印象に残ったのは、宮司さんや禰宜さんとの何気ないおしゃべりでした。取材がなければ出会う機会もない方々。本文には書ききれなかった逸話もたくさんお聞きしました。加えて、道中の楽しかったこと。時間に追われながらも駆け巡った名前のない道路の数々。人との出会い、未知(道)との遭遇、読者の皆さんとも、この体験を共有したいものです。今度の休日には、お好きな神社へぶらっと出かけてみませんか。




