夏休みは子どもたちにとって待ち遠しい長期休暇―。そんなイメージとは裏腹に「家庭によっては最も過酷な時期になることもあります」。こう話すのは、NPO法人キッズバレイの理事で「ぐんまほほえみネット」女性相談事業リーダーの丹羽育代さんだ。日頃から子どもや保護者の相談に向き合う中で、夏休みは子どもたちの暮らしや家庭環境が最も表れやすい時期だと話す。

(2026年7月29日付「みんなの学校新聞」記事から)

夏休みは家族の実情が顕在化

 夏休みは学校という日常がなくなることで、家庭が抱える問題が子どもの生活にそのまま表れ始める。

 「学校は子どもにとって勉強の場であるだけでなく、家庭から離れられる居場所でもあります。家庭に息苦しさを感じている子にとって、夏休みは逃げ場がなくなる時期なんです」

 家庭内の暴力だけではない。親から繰り返し否定的な言葉を浴びせられる、家にいても安心できない―。そうした目に見えにくい家庭環境の影響も少なくないという。

 昼夜逆転やゲーム・ネットへの依存も、その背景には「昼間を過ごしたくない」という心理が隠れていることがある。

 「昼間は家族との時間や、学校や塾の夏期講習に行っている同級生のことを考えてしまう。だから昼は寝て、夜になるとようやく気持ちが落ち着いて活動できる。そういう子は珍しくありません」と丹羽さん。

 支援の現場では、「夏休みどこへ行ったの?」「誰と過ごしたの?」「昼ご飯は何を食べているの?」といった何気ない会話から、家庭の状況が見えてくることも多いという。

 以前、丹羽さんが「夏休みにどこかお出かけした?」と尋ねると「旅行に行ったよ」と教えてくれた子がいたという。その家庭は経済的な支援を受けながら子育てをしている世帯だった。そうした背景を把握していたので「誰と行ったの?」と聞くと、「ママの親族が連れて行ってくれた」と返ってきた。丹羽さんは、それまで母親が一人で子育てを抱え込んでいるのではないかと心配していた。ところが話を聞くうちに、「卒業や入学のお祝いには、親族がディズニーランドへ連れて行ってくれる」という話も出てきた。

 「その話を聞いて、『お母さんには頼れる親族がいるんだ』と分かったんです。家庭にはちゃんと支えてくれる人がいる。そういうことも雑談の中から見えてきます」と丹羽さんは子どもとの対話の大切さを話す。

 一方で、給食のない夏休みのお昼について尋ねると、冷蔵庫に食材があって自分で作っているという子もいれば、準備そのものがされていない家庭もあったりする。

 子どもの何気ない一言から、その家庭の状況が顕在化する。だからこそ、子どもとの雑談にしっかり耳を傾け、丁寧に話を聞くようにしている。

普段からのつながりが大切

 丹羽さんは、子どもへの支援は長期休暇だけでは足りないと考えている。「夏休みだけ何かを用意するのではなく、普段から子どもと地域がつながっていることが大切です。その関係性があって初めて、『困ったらあそこへ行こう』と思えるんです」

 子どもと一口に言っても、置かれている状況はさまざまだ。経済的には恵まれていても親子関係に悩みを抱える子、不登校で学校以外の居場所を必要としている子、家庭内に安心できる場所がない子―抱える事情は一人ひとり違う。

 だからこそ丹羽さんは、「家庭や学校だけではなく、『いつでも帰れる居場所』を地域の中につくっていくことが大切です」と語る。

(編集部)

本記事は「みんなの学校新聞」で読むことができます
 https://np-schools.com/news/18723


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